【映画】ソニック・ザ・ムービー 感想 (ネタバレあり)



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※おことわり
映画は一回しか観ていません。一回観た記憶を元に感想を書いているので誤りがあるかもしれません。
そして、ネタバレを多く含みますのでご注意ください。


あらすじ
平和に暮らしていたソニック。しかしある日、自分が持つ"スーパーパワー"を奪おうとする敵に狙われた彼は地球に逃げる事に・・・。
それから10年、ソニックは誰にも見つからないように、でも「仲間がほしい」と願いながら、さびしくひとりぼっちで暮らしていた。そこに地球制服をたくらむ悪の天才科学者ドクター・ロボトニックが現れ、ソニックは捕まりそうになってしまう!大ピンチの彼は、偶然出会った保安官トムに助けを求めるが・・・!?
誰も見たことのないスーパー・スピード・アドベンチャーの幕が上がる!
(公式HPより)


原作ゲーム

メガドライブ版ゲーム『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の発売は1991年。
当時は日本のみならずアメリカでも任天堂が帝国を築いており、その牙城を崩すために満を持して登場したソニックは任天堂(要するにマリオ)には無いクールさとスタイリッシュさ、スピード感がアメリカ人の絶大な支持を得て知らない人は居ない存在に。
当時の子供達へのキャラクター人気度調査ではミッキーマウスを超えたとも伝わるソニックの数々の偉業はそれだけで記事一つ出来ちゃうのでまたの機会にでも…。


第一印象

私は1991年当時は高校生で、すでに熱烈なセガ信者でした。
当然『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』も時間を忘れて熱中し今も思い入れが強い作品なので、映画版を観た後に当然ながら「ソニックはこうであってほしかった…」という想いはありました。

映画版のソニックは「逃げ」ます。
誰かに見つかったら逃げる。襲われたら戦わずして逃げる。
(逃げる先として決めてるのが「キノコの星」というのもマリオを表しているようで面白いですね。自社ハードが無くなった今、任天堂のゲームによくゲスト参戦していますから。)
そして、誰一人として友達も知り合いもいない。

ゲームのソニックは違います。
第1作のストーリーはと言えば…。



メガドライブ版『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』操作説明書より



映画版は降りかかる火の粉を払うための戦いですが、ゲーム版でのソニックは悪の野望を挫くため、ロボットに改造された動物たちを救うためエッグマンに立ち向かいます。
本人は「正義のためではなく、自分がやりたいようにやっている」と言うのがまた格好いいですね。
逃げもしなければ孤独でもありません。
島の動物たちのヒーローです。

映画のメインターゲットは間違いなく親子連れですし、子供に観させるのであればやはり逃げるソニックではなく、「悪に立ち向かうヒーロー」としてのソニックを描いて欲しかったな、という想いはありました。

では、この映画は原作とは乖離した残念な作品なのでしょうか…?


原作と異なる実写映画は大抵ひどいものだけど…

まず、結論から言うとこの映画は様々な要素が教科書通りに非常に丁寧にまとめ上げられた良作だと思います。

・孤独な少年が大切な仲間と居場所を得るまでの成長物語
・年齢や種族(?)を越えた絆を深める相棒との友情物語
・車でハイウェイを走りモーテルに宿泊するロードムービー
・相棒と軽口を叩きながらバーでチンピラ(バイカー)と喧嘩するバディ映画
・圧倒的に強い相手に追いかけられるターミネーターのような逃走劇
もちろん、アクション要素も満載です。

これらの要素が破綻なく一つの作品にまとめられていて、突出した要素は無いにものの子供が安心して楽しめる作品です。

少し真面目な話しをすると、現実には学校に友達が居ない、学校にも家にも居場所がない、と感じている子供は、哀しい事にきっと多いと思います。
残念ながらいじめにあっている子も多いことでしょう。

そういった小学生にとっては、10年間も一人きりで話し相手が居ないからか独り言が非常に多く、Dr.ロボトニック(エッグマン)の理不尽な暴力に晒され、そこから逃げだそうとするソニックの境遇に共感を覚えやすいのではないでしょうか。

手の届かないヒーローに憧れるよりも、自分と近い少年(ソニック)が唯一無二の友と力を合わせて理不尽な暴力に立ち向かい困難を克服する物語の方がより子供達に勇気を与えてくれるんじゃないかと感じました。
結果としてやっぱりソニックは子供達のヒーローだな、と思います。

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感想

デザインで紆余曲折あったソニックのCGとソニックらしい仕草や表情、ゲームのオマージュのみならず「スピード」などの映画もネタにしてニヤリと笑える要素も満載。
大人も難しい事を考えずに素直に楽しめる娯楽作品でした。
当時ゲームをやっていた子供が大人になり、子供を連れて映画館へ行く。
日本ではドラえもんやクレヨンしんちゃんなどのように親子で共通に楽しめる作品です。

ゲームでは敵にぶつかっても死なない為のリングが、映画では異世界を含む別の場所へのワープホールを開く鍵となっています。
そんな重要そうなアイテムなのに数は沢山ありそうだけど…(笑)
そして、Dr.ロボトニックもリングの効果には価値を見いだしていないのか、とにかくソニックの超エネルギーの謎を追いかけます。
ゲームではカオスエメラルドという超エネルギー体を巡る戦いでしたが、映画ではソニック自身にその力が備わっている描写ながらその秘密は明かされていないので続編に期待といったところでしょうか。

それでは、個別に気になった所を掘り下げてみましょうか。


相棒、ドーナツキング

ソニックの唯一無二の相棒、保安官トム。
事件なんて絶対に起きないような平和で小さな田舎町グリーンヒルズで、何時間待っても車が一台も通らないような道に待ち伏せてスピード違反の取り締まりをしていたら、ソニックが計測器の前を走り抜け記録更新の遊びに使われる始末(笑)

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ソニックが一方的に気に入っており家の窓から覗き見をしてテレビや映画を見つつ一緒に生活している気分になっているのもちょっと切ない。
トムはドーナツが大好物のためソニックから「ドーナツキング(パンフだとドーナツ卿)」と呼ばれ、奥様の方は「プレッツェル婦人」と愛称を付けられる(笑)

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ただ、何も起きない田舎町で燻っている現状から抜け出すために、大都会サンフランシスコで自分の力を試したいと出した転属願いが受理されて喜ぶトム。

トムもソニックと同じように「居場所」を探しているという事ですね。
おそらくアラフォー位でしょうから、変わらない毎日を惰性で過ごす自分を省みて、より広い世界を見てみたい、という思いは、大人にとって大いに共感できるキャラクターでしょう。
転職したいと日々願っている私は自分の事がモデルになったかと思うほどの共感でした(笑)

そして、異星人映画の多くでは、たとえばE.T.のように相棒は少年です。
ですが、この映画では少年であるソニックに対してオッサンであるトムがパートナーです。
これはターゲット層である「親子連れ」を意識しての事でしょうか。
子供はソニックの境遇に共感し、親はトムの心境に共感する。
映画を観終わった後に親子がそれぞれの立場で語り合うのは素敵ですね。

私は独身なので一人こうしてブログで語っているんですけど(笑)



さて、せっかく掴んだ栄転も問題を起こしたら無くなってしまうというのに、追われて困っているソニックを助けてしまうお人好しさがまた魅力的。
普通の人ならソニックの姿を見たら排除するなり捕獲するなりするだろうしね。

物語冒頭、ソニックはボールより速く動けるので卓球も一人で両サイド出来てしまう、野球もすべてのポジションをこなして出来てしまう様子が描かれました。

ただ、「ハイタッチ」は絶対に一人では出来ない。

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その寂しさを観客は知っているからこそ、最後のソニックとトムのハイタッチは涙無くして見ることができませんでした。
そして、最後にトムはサンフランシスコへの栄転をやめてグリーンヒルズでソニックの部屋を作り一緒に住み始めます。
大切な物はすぐそばに有った、という事に気づいたという事ですね。


存在感が強すぎる敵、Dr.ロボトニック

ジム・キャリーの怪演ぶりが話題として先行するDr.ロボトニック。
ただ、このキャラクター造形にも考えされられる物があります。

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人間の水準を遙かに超えた天才であり、自身もそれを自覚しているため他の人間は見下し、機械のみを友と考えています。
そう、元々人間でありながらもソニックと同じようにこの世界にとっての「異物」であり、それぞれが異物ゆえの孤独を抱えているんですね。

そして、孤独から抜け出して友達が欲しいソニックと、人間を見下して道具としてしか思わない「孤独」を「孤高」と勘違いして生きるロボトニックという対比もある。
同類でもあり正反対でもあるという、同じコインの表裏のような存在として描かれている訳です。
これも映画ならではの関係性というところでしょう。


問題はラストシーン、キノコの星へ飛ばされたロボトニックが、髪を丸め見た目も呼び名もエッグマンとなる場面。
現実世界の人間だったロボトニックが、ファンタジーであるゲーム世界のキャラクターへと戻ったという事なのか…。
この辺りも続編が待ち遠しいところです。

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映画化されると芸能人が声優をやる問題

ゲーム機の進化により、キャラクターに声が付くようになりました。
長らく担当していたのは金丸淳一氏だけど、今回は俳優・中川大志さん。
正直、テレビドラマを観ない私としては知らない人だったので「また映画だから芸能人が吹き替えを担当か~」とウンザリでした。

ただ調べて分かったのは、アメリカ版でも長く声を当てていた人から変更になっていた事から、キャスティング一新というのが方針としてあった様子。
その判断に日本版も準拠したのでは、という解説は見かけました。
おそらく映画版だけのキャスティングだろうし、ゲームとは性格的に異なる設定でもあるので、ここに目くじらたてても仕方ないかな。

実際、中川大志さんの吹き替えは違和感なく非常に素晴らしい出来でした。
芸能人が吹き替えする惨状(棒読みという言葉すら生ぬるい)を多く観てきているだけに、これはとても大成功!

ちょっと調べたらおはスタで山ちゃんと共演していたとの事で、そういった意味で肩の力を抜いたり助言を受けたりとやりやすい環境だったんじゃないでしょうか。



原作ゲームへのオマージュ

正直映画館で1回しか観ていないので(それでこんな長文をダラダラ書いてる私もどうかしてますが(笑))気づけていない小ネタも沢山あると思います。
それらはDVDを購入後に確認するとして…。


とにかくこれはもう最初のオープニングロゴが全て!!
パラマウントの★がリングになってるところでクスリとし、そこからゲーム版ソニックの映像、それが引いていくとセガの数多くのゲームがモザイクアートのようにSEGAロゴに変化する!!
もうたまりません!
セガ信者はここで一回昇天する事でしょう。

この映像は予告編で公開されているので、キャプチャーしてみました。














はい、せーの!

セェ~ガァ~~!!

ほら!
これだけで目頭が熱くなりますね!!
エンディングで流れた「映画のストーリーをゲームで再現したムービー」もとても素晴らしい出来でした。


深読みしてみる

この映画は「同じもの」でありながら「真逆のもの」という【同調と対比】が根底のテーマとしてありそうです。

まずはソニックとDr.ロボトニック。
ソニックはゲームの登場キャラクターというファンタジーな存在でありながら、寂しがったり楽しくてはしゃいだりと人間味あふれるキャラクター。
ロボトニックはれっきとした人間でありながら、一貫して人間離れしたファンタジーでゲームのようなキャラクター。

それぞれ孤独を抱えながらもそれを捨て去りたいソニックと貴重なものと思っているロボトニック。

このように、同じでありながら真逆であるという面白い関係性ですね。

それはソニックとトムもそう。
少年と壮年という親子ほど歳が離れているのに、2人とも自分の居場所を探し求めています。

相関図を起こしてみたらなかなか楽しい事になりそう。



おわりに

第一印象は冒頭にも書いた通り、ソニックおよびシナリオに違和感を感じていました。
ただ、最後まで観てみれば非常に心地よい作品でした。
取り立てて際立った点は無いため「傑作」「名作」ではなく「良作」と最初に表現しましたが、それは欠点ではなく子供にも分かりやすい、大人も難しい事を考えずに楽しめるという良い効果を生んでいます。

もちろんツッコみたい箇所はあります(笑)
バイカーとの喧嘩のシーンやビルの上でミサイルに囲まれたシーンなど、周囲が止まっているように見える中をソニック1人だけが動いている事でスピードを演出する、というものです。
同様の描写がX-MENに有ったように思いますがそれは黙っていましょう(笑)
このような描写ではスピード感よりも「時間を止める」というような特殊な超能力をイメージしてしまいがちで、あまり効果的な演出ではなかったと思います。
まぁ、そんなツッコみは無粋ですね。

ゲームとは設定もシナリオも異なるからこそ、ゲームを知らない人でもイチから楽しめる良作。
まだギリギリ上映してるかな?
半年後くらいだと思いますが、DVDや配信でぜひお楽しみください。


あの可愛い可愛いキャラクターが登場する続編が早くも楽しみです。
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