【教養】瓜田に履を納れず

お客様の別の拠点に行った時、休憩所の椅子が片付けられていました。
今までコロナ罹患者を7~8人出していたので「また陽性の人が出たのか?」と思いながら貼り紙を見てみると…。



??

なんだこれ?

うりたにりをのうれず…。

文字化け!?

なんて思いますよね(笑)

実はコレ、漢詩なんです。



言葉の意味は…

瓜田に履を納れず(かでんにくつをいれず)
ウリ畑で靴が脱げてしまっても、周囲から「ウリを盗もうとしている」と疑われる恐れがあるので、かがんで靴を履き直すような事はすべきではない。

 

すなわち「人から疑われるような行為はするな」という意味です。


これと対になる言葉として
李下に冠を正さず(りかにかんむりをたださず)
があります。
李(すもも)の木の下で冠がズレたとしても、周囲から「すももを盗もうとしているのか」と疑われる恐れがあるので、冠を直すために手を上げないほうがよい。

 

こちらも同じように人から疑われるような行為はしないように、という戒めです。
この言葉の方が有名だと思いますが、本来はセットで使われるようです。


冠と言っても皆さんがイメージするであろう王冠のような物ではありません。
(私もよく知りませんが)多分こういう物だと思います。


日本での烏帽子に似たような感じなのでしょうか。
位や役職によって形は異なりますが、普段の身だしなみと思って良さそうですね。
(漢民族は着用が義務化されていたようです)

ちなみにですが、二十歳の事を「弱冠」というのも、この冠が由来です。
男子は成人すると冠をかぶるという元服の儀式があり、「冠をかぶったばかり」というのを「弱」を付けて弱冠と呼んだそうです。

今では意味合いが変転して、年若い人の事を「弱冠○○歳で…」と広く適用されるようになっていますね。


なぜこの言葉なのか?

さて、言葉の意味は分かりましたが、閉鎖している休憩所の貼り紙が何故この言葉なのか!?
気になりますね。

感染防止策である事は間違いないでしょう。
休憩所ではお茶やコーヒーを飲みながら静かにスマホを弄る人が大半だと思いますが、中には2~3人でお喋りする人も居るでしょうから、そういう人達に対する警告でしょうか。

仮にそうだとしても、お喋りしてる人達に向かって「疑われるような事をするな」は意味が通りませんね。


「君子危うきに近寄らず」という言葉もあります。
「立派な人物は危ないところに近づかない」という意味ですから、これならまだ「休憩所は感染リスクが高いから近寄らないで!」というように意味が通じますね。


つまり、私の推理の結論としては、

「使う言葉を間違えた」

です(笑)

誰がこの言葉にしたのかは知りませんが、もしこの推理通りだとしたら、ちょっと恥ずかしい貼り紙だという事です(笑)
学があるところを見せようとしてやらかしてしまった訳で(笑)


故事成語の面白さ

私の本棚のすぐ手が届く所にこういう本があります(奥の方にはもう数冊この手の本があります)



時折この中から言葉を選んで、その言葉の基になったエピソードとか意味合いだとかをご紹介していく事としましょう。

例えば我々現代人がごく普通に使う「五十歩百歩」。
たいして変わりがない、というような意味ですが、これも実際の逸話が基になって出来た言葉です。
「馬鹿」とか「牛耳る」とかもちゃんとエピソードが有るんですよ。

なかなかに面白いので、楽しみにしていてください。

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